ゲームをしていて、コントローラのスティックを操作していないのに勝手に動いてしまうドリフト現象があります。
PS4/PS5/Xbox/Switch全てのコントローラに共通して起こってしまう不具合ですが、このドリフト現象で手っ取り早い解決策として接点復活剤を吹きかけてしまうという情報が散見されます。
実際に吹きかけて直ったという方もいますが、実際のところ効果があるのか実験し検証をしてみました。
そもそも接点復活剤とは
まず、そもそも接点復活剤とはなんなのか、言葉の通り接点を復活させるスプレーとして漠然としたイメージを持っている方も多いかと思いますので、少しですが接点復活剤とは何なのか解説します。
接点復活剤とは、機器の性能を戻し故障を防ぐために、電気機器や電子機器の接点部分に使用されるスプレーです。
主に、接点の酸化や汚れを除去し、通電を良好に保つために用いられます。
成分・作用
接点復活剤には、第四類第三石油類 潤滑油の他に様々な化学成分が含まれています。
その配合によって性能は大きく変動しますが、一般的にシリコンや酸化銀が使われます。
それらの成分によって、対象となる接点に浸透し、酸化物や汚れを化学的に分解します。
これにより、電気的な接触が改善され、機器の動作不良を解消することが可能です。
用途・使用方法
接点復活剤は、家庭用電化製品・業務用機器、さらには車両の電装系に至るまで幅広く使用されており、特に古い機器や長期間使用している接点部分に効果的です。
接点復活剤の使用方法は、まず接点部分をしっかりと清掃しゴミや汚れを取り除きます
そして、接点復活剤を適量吹きかけ数分待つことで成分が作用し効果を発揮します。
その後、機器を再起動することで、正常な動作を確認する事が出来ます。
使用上のリスク
接点復活剤には、化学成分が含まれているため、敏感な方にはアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
また、使用箇所によっては過剰に吹きかけると、接点自体が劣化することがあり、適切な量を守らなければ、逆に接点の機能を損ねてしまうことがあります。
接点復活剤の種類によっては、ゴムやプラスチックに対して攻撃性を有するものもあり、それらを劣化させ機器類の寿命を著しく縮めてしまう危険性があります。
上記の説明で接点復活剤はどういうものか、ある程度理解できたと思います。
それでは、今回の実験のメインとなるコントローラのスティックに接点復活剤をかける実験に進みたいと思います。
接点復活剤が浸透しているか実験
今回の実験ではPS5純正コントローラDualSenseを用意しました。
PS4純正コントローラやNACONなどのコントローラもスティック部分の形状はほぼ共通なので、他機種コントローラでも同じ検証結果になると思います。
すぐ分解できるように
先ずは、直ぐに分解し確認ができるように一部の部品を取り除いたPS5純正コントローラDualSenseを用意しました。
接点復活剤を吹きかける
接点復活剤をスティックカバーの上から吹きかけます。
今回の実験で使用したAZの接点復活剤はコンパクトで少量タイプで好んで使用しています。
ここでの噴射時間は片側約1秒間おこないました。
L3・R3どちらも
接点復活剤を約1秒間噴射しましたが、両スティックの根元がテカテカと光沢を帯びている事が確認できます。
グリグリ馴染ませる
内部のスティックモジュール基板まで浸透させるつもりでスティックをグリグリと約10秒間回し馴染ませました。
その後3分ほど放置し浸透していくのを待ちます。
分解検証
放置後、スティックモジュール基板などのパーツに接点復活剤が浸透しているか確認するため分解していきます。
スティックカバー表面
接点復活剤を吹きかけたスティックカバーの根元はテカテカと光沢を帯びている事が確認できます。
スティックカバーの傘状の部分には全体的に浸透していて、メイン基板へ垂れていっているのが分かります。。
スティックカバー裏
スティックカバーの裏側には5mmほど接点復活剤の水滴になって溜まっていました。
スティックをグリグリと回した結果なのか、スティックカバー裏面に少量ながら浸透するようで、もっと時間をかけて馴染ませれば全体に広がるでしょう。
スティックモジュール
スティックモジュール基板本体には接点復活剤の付着は見られませんでした。
今回吹きかけた接点復活剤の量と浸透時間では、スティックモジュール基板まで浸透させる事は出来ませんでした。
恐らくですが、相当な量の接点復活剤を吹きかけ馴染ませなければ目的となるスティックモジュール基板まで到達する事は出来ないのでしょう。
実験結果
今回は、分解していない状態のコントローラに接点復活剤をかけてドリフト現象を直す方法に意味があるのかを実験しました。
全く意味がない?
今回の実験方法では、少量の接点復活剤を吹きかけてもスティックモジュール基板本体には全く届かないという結果となりました。
また、大量の接点復活剤を吹きかけスティックモジュール基板へ浸透させたとしても、必要のない箇所にまで浸透してしまい思わぬ不具合をもたらしてしまうでしょう。
余計な不具合を誘発する可能性
スティックモジュール基板まで接点復活剤が浸透したとして、内部のゴミや汚れを取り除く事は出来ないため、逆にオイル状に留まった接点復活剤が余計にゴミや汚れを付着させ不具合を誘発させます。
接点復活剤はアルコールなどのように揮発せずオイルのようにそのまま留まります。
使い方を間違っている
接点復活剤の成分と用途を見ますと、第四類第三石油類 危険等級Ⅲ、電気機器接点の酸化・硫化防止に使用し、ゴム・プラスチックには使用しない、とあります。
まず、第四類第三石油類 危険等級Ⅲとありますが、これは潤滑油・オイル等を指します。
そして、使用箇所においては電気機器の接点とありますが、電気機器の接点というものは殆どの場合で金属部分を指し、ゴム・プラスチックに対しては攻撃性があるという事が分かります。
コントローラのスティックモジュール基板の殆どはプラスチックで構成され、センサー部にはパッキンとなるゴムが使用されています。
これらを踏まえると、接点復活剤をスティックモジュール基板に吹きかける事は適切ではない事が分かります。
分解清掃が正攻法
今回の実験検証で分かった通り、少量では接点復活剤は浸透せず、大量だと余計な部分へ流れてしまうという事が分かりました。
また、そもそも接点復活剤を使うには適さない部品ですし、第四類第三石油類で引火性は低いかもしれませんが、ある程度密閉されているコントローラ内部では何が起こるか分かりません。
そして、私の経験談ですが、接点復活剤を吹きかけた事でスティックモジュール基板のセンサー部にゴミや汚れが多量に付着し不具合を起こしてしまったコントローラを何度か修理した事があり、その際は分解し清掃する事でドリフト現象は解消されました。
この事を踏まえると、接点復活剤を吹きかけるだけでドリフト現象が直るなんて事はあり得ませんので分解清掃をしましょう。
色々な動画や記事で接点復活剤を吹きかけると直ると言われていますが、信じないようにしましょう。
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